抜毛症とは?
抜毛症(Trichotillomania/Hair-Pulling Disorder)とは
抜毛症(ばつもうしょう)とは、自分の毛髪や体毛を繰り返し抜いてしまい、その結果として毛が薄くなったり脱毛したりする精神疾患です。
以前は「抜毛病」と呼ばれることもありましたが、現在のDSM-5-TRやICD-11では**「抜毛症」**という名称が一般的です。
抜毛症は、**「強迫症および関連症群(Obsessive-Compulsive and Related Disorders)」**に分類されています。
主な特徴
抜毛症では、
毛を抜きたいという強い衝動が生じる
抜くのをやめようとしても難しい
抜いた後に一時的な安心感や満足感を感じることがある
という特徴があります。
抜く部位
毛を抜く部位はさまざまです。
頭髪(最も多い)
眉毛
まつ毛
あごひげ
腕や脚の毛
腋毛
陰毛
その他の体毛
複数の部位から抜く人もいます。
主な症状
毛を繰り返し抜く
脱毛が目立つ
やめようとしてもやめられない
抜いた毛を触る
毛根を観察する
抜いた毛を口に入れることがある
食毛症(Trichophagia)
一部の人では、抜いた毛を飲み込むことがあります。これを食毛症といいます。
大量に飲み込むと、胃や腸の中で毛の塊(毛球)ができることがあり、腸閉塞などの原因になることがあります。
抜毛が起こりやすい場面
テレビを見ているとき
勉強中
読書中
スマートフォンを見ているとき
ストレスを感じているとき
不安なとき
暇なとき
寝る前
無意識に抜いている場合もあれば、意識して抜く場合もあります。
原因
抜毛症は、複数の要因が関係して発症すると考えられています。
生物学的要因
遺伝的要因
セロトニンやドパミンなど神経伝達物質の関与
前頭前野や線条体など脳の神経回路の機能異常
心理・環境要因
ストレス
不安
緊張
退屈
感情調整の困難
診断
DSM-5-TRでは、主に以下の点を評価します。
繰り返し毛を抜き、脱毛がみられる。
毛を抜く行動を減らそう、またはやめようと繰り返し試みている。
症状により著しい苦痛や社会生活・仕事・学業への支障がある。
他の身体疾患(皮膚疾患など)や精神疾患だけでは十分に説明できない。
治療
① 認知行動療法(CBT)
最も有効性が示されている心理療法の一つです。
特に**習慣逆転法(Habit Reversal Training:HRT)**がよく用いられます。
内容には、
毛を抜くきっかけを把握する
抜きそうになったら別の行動を行う
環境を工夫する
再発予防
などがあります。
② 薬物療法
抜毛症に対する薬物療法は、認知行動療法ほど確立していませんが、症状や併存疾患に応じて検討されることがあります。
SSRI(効果には個人差があります)
N-アセチルシステイン(NAC)(一部の研究で有効性が示唆されていますが、日本では抜毛症に対する標準治療ではありません)
その他、難治例では専門医が薬剤を検討することがあります。
③ 家族支援
家族は、
無理にやめさせようとしない
責めない
治療を支える
ことが大切です。
合併しやすい疾患
抜毛症では、以下の疾患を併存することがあります。
強迫症
不安症
うつ病
注意欠如・多動症(ADHD)
チック症
皮膚むしり症
予後
小児期から始まることが多く、軽快する人もいますが、思春期以降に慢性化することもあります。早期に認知行動療法などの適切な治療を受けることで、症状の改善が期待できます。
他の疾患との違い
疾患 | 主な特徴 |
抜毛症 | 毛を繰り返し抜いてしまう |
皮膚むしり症 | 皮膚を繰り返しむしる |
強迫症 | 強迫観念と強迫行為が中心 |
ためこみ症 | 物を捨てられずため込む |
「抜毛症」と「くせ」の違い
髪の毛を触る癖や、時々毛を抜いてしまうこと自体は珍しくありません。しかし抜毛症では、
抜くことをやめようとしてもやめられない
脱毛が目立つほど抜いてしまう
強い苦痛や生活への支障がある
という点が特徴です。
そのため、単なる癖ではなく、治療や支援の対象となる精神疾患と考えられています。
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