機能性神経学的症状病とは?
機能性神経学的症状病(Functional Neurological Symptom Disorder:FND)とは
機能性神経学的症状病(Functional Neurological Symptom Disorder:FND)とは、運動や感覚などの神経症状が実際に現れているにもかかわらず、脳卒中や脳腫瘍などの神経疾患だけでは十分に説明できない状態を指す疾患です。
DSM-5-TRでは「機能性神経学的症状病」という名称が用いられ、「転換症(Conversion Disorder)」という名称も併記されています。
近年では、「症状は本人が作り出しているものではなく、脳や神経の機能(働き)の異常によって生じる」という考え方が重視されています。
主な症状
症状は突然現れることもあれば、徐々に進行することもあります。
運動症状
手足に力が入らない(麻痺)
歩けない
歩き方が不安定
手足の震え
けいれんのような発作(機能性発作)
筋肉が勝手に動く
声が出ない(失声)
飲み込みにくい
感覚症状
しびれ
感覚が鈍い
視力低下
視野が狭くなる
聞こえにくい
その他
めまい
強い疲労感
慢性的な痛み
発話困難
特徴
FNDでは、
症状そのものは本人にとって現実のものであり、演技や仮病ではありません。
また、神経診察では、症状が脳や神経の病気に典型的なパターンとは一致しない所見(例えば、状況によって筋力が変化するなど)がみられることがあります。
原因
正確な原因はまだ十分に解明されていません。
現在では、
脳機能の異常
脳のネットワークの働き方の変化
注意や運動制御の異常
が関与すると考えられています。
心理社会的要因
発症や悪化に関係することがあります。
強いストレス
トラウマ
不安症
うつ病
慢性的な疲労
ただし、すべての患者さんにストレスやトラウマがあるわけではありません。
診断
神経内科や精神科で、
詳しい神経診察
MRI
CT
脳波(EEG)
血液検査
などを行い、他の神経疾患を除外するとともに、FNDに特徴的な神経診察所見を確認して診断します。
近年は、「他の病気がないからFND」とするのではなく、FNDを積極的に示す診察所見があることも診断の重要なポイントです。
治療
1. 病気について理解すること
治療の第一歩は、
症状は本物である
仮病ではない
回復の可能性がある
ことを理解することです。
2. リハビリテーション
非常に重要です。
理学療法
作業療法
歩行訓練
運動療法
3. 心理療法
必要に応じて行われます。
認知行動療法(CBT)
ストレスマネジメント
トラウマへの心理療法
4. 薬物療法
FNDそのものを治す薬はありません。
ただし、
不安
うつ
不眠
慢性疼痛
などに対して薬物療法が行われることがあります。
脳卒中との違い
項目 | 機能性神経学的症状病 | 脳卒中 |
麻痺 | ある | ある |
MRI・CT | 原因となる異常が見つからないことが多い | 異常がみられることが多い |
神経診察 | FND特有の所見がみられることがある | 神経学的な障害パターンに一致する |
治療 | リハビリ・心理社会的支援 | 脳卒中の治療が必要 |
詐病との違い
項目 | 機能性神経学的症状病 | 詐病 |
症状 | 本人にとって現実のもの | 意図的に装う |
意図 | ない | 利益を得る目的などがある |
治療対象 | はい | 精神医学的には別の概念 |
予後
予後は個人差があります。
発症後早期に診断・治療が開始されると改善しやすい傾向があります。
長期間続いた症状では回復まで時間がかかることがあります。
リハビリテーションと心理的支援を組み合わせることで、症状や生活機能の改善が期待できます。
受診の目安
次のような場合は、神経内科や精神科・心療内科への相談を検討してください。
麻痺やしびれ、けいれん様発作などが繰り返し起こる
検査では異常が見つからないが症状が続いている
症状によって仕事や学校生活に支障がある
ただし、突然の片麻痺、ろれつが回らない、急な視力障害、意識障害などが起きた場合は、脳卒中などの緊急疾患の可能性があるため、まず救急医療機関を受診してください。
よくある誤解
「気のせい」「演技」ではありません。 症状は本人が実際に経験しているものであり、本人の意思でコントロールできるものではありません。
検査で異常がないからといって、症状が存在しないわけではありません。 FNDは、脳や神経の「構造」ではなく「機能」の異常によって生じると考えられており、適切な診断と治療が重要です。
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