物質・医薬品誘発性不安症とは?
物質・医薬品誘発性不安症(Substance/Medication-Induced Anxiety Disorder)とは
物質・医薬品誘発性不安症とは、薬物、アルコール、違法薬物、または医薬品の使用や中止(離脱)に関連して、不安やパニック発作などの症状が生じる精神疾患です。
DSM-5-TRでは不安症群の関連疾患として位置づけられています。
主な特徴
この疾患では、不安症状が物質や医薬品の影響によって引き起こされることが特徴です。
症状は以下のようなタイミングで起こることがあります。
使用中(中毒・急性作用)
使用量の増加後
減量中
中止後(離脱症状)
主な症状
精神症状
強い不安
緊張感
落ち着きのなさ
焦燥感
恐怖感
パニック発作
集中力低下
イライラ
身体症状
動悸
発汗
手足の震え
息苦しさ
めまい
吐き気
胸部不快感
筋肉の緊張
不眠
原因となる物質・医薬品
さまざまな物質が原因となる可能性があります。
アルコール
飲酒中
離脱(禁酒後)
カフェイン
コーヒー
エナジードリンク
カフェイン錠
過剰摂取により、不安や動悸が起こることがあります。
覚醒剤・刺激薬
メタンフェタミン
コカイン
MDMA
メチルフェニデート
アンフェタミン製剤
大麻
一部の人では、不安やパニック発作を誘発することがあります。
ベンゾジアゼピン系薬
急な中止や急速な減量によって、離脱症状として強い不安が現れることがあります。
例
ロラゼパム
アルプラゾラム
ジアゼパム
クロナゼパム
その他の医薬品
原因となることがある薬の例として、
副腎皮質ステロイド(プレドニゾロンなど)
気管支拡張薬(サルブタモールなど)
甲状腺ホルモン製剤
一部の抗うつ薬(開始初期)
一部のADHD治療薬
一部のパーキンソン病治療薬
などがあります。
診断
DSM-5-TRでは、主に以下の点を総合的に評価します。
不安またはパニック発作がある。
症状が物質・医薬品の使用中または離脱中に始まった。
使用した物質や医薬品が、その症状を引き起こす可能性がある。
他の不安症や身体疾患だけでは十分に説明できない。
日常生活に支障をきたしている。
治療
① 原因物質への対応
最も重要なのは、原因となっている物質や医薬品を特定し、医師の指導のもとで適切に対応することです。
原因薬の減量・変更・中止(自己判断では行わない)
アルコールや違法薬物の使用を中止する
離脱症状が予想される場合は医療機関で管理する
② 薬物療法
必要に応じて、不安症状を和らげる薬が一時的に使用されることがあります。ただし、原因となっている物質や医薬品との相互作用や依存性を考慮して慎重に選択されます。
③ 心理社会的支援
認知行動療法(CBT)
心理教育
依存症治療プログラム(必要な場合)
再発予防支援
予後
原因となる物質や医薬品への適切な対応により、多くの人で症状は改善します。ただし、長期間の使用や依存がある場合は回復に時間がかかることもあり、継続的な医療支援が重要です。
他の不安症との違い
疾患 | 主な原因 |
物質・医薬品誘発性不安症 | 物質や医薬品の使用または離脱によって生じる不安 |
全般不安症 | 幅広い出来事への慢性的な過度の心配 |
パニック症 | 予期しないパニック発作と再発への不安 |
社交不安症 | 他人から評価される場面への恐怖 |
限局性恐怖症 | 特定の対象や状況への恐怖 |
注意点
薬を服用中に強い不安やパニック発作が現れた場合でも、自己判断で薬を中止することは危険な場合があります。特にベンゾジアゼピン系薬や一部の抗うつ薬では、急な中止により離脱症状が起こることがあります。不安症状が薬や物質に関連している可能性がある場合は、処方した医師や薬剤師に相談し、適切な評価と対応を受けることが重要です。
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