異食病とは?
異食病(Pica)とは
異食病(Pica)とは、食べ物ではないものを、発達段階や文化的慣習では説明できない形で、1か月以上にわたって繰り返し食べる摂食症・食行動症群の一つです。
DSM-5-TRでは「異食病(Pica)」、ICD-11でも同様の概念が採用されています。
主な特徴
異食病では、本来食べるものではない物質を繰り返し摂取します。
例えば、
土
砂
粘土
石
紙
チョーク
髪の毛
布
糸
氷(※氷だけを大量に食べる場合は鉄欠乏との関連が指摘されています)
洗剤
石けん
金属片
プラスチック
などがあります。
診断基準(概要)
DSM-5-TRでは、おおむね次の条件を満たす場合に診断が検討されます。
食べ物ではない物質を1か月以上繰り返し食べる。
年齢や発達段階を考えて正常な行動ではない。
文化的・宗教的慣習では説明できない。
他の精神疾患や身体疾患がある場合でも、治療が必要なほど症状が目立つ。
原因
原因は一つではなく、さまざまな要因が関係すると考えられています。
生物学的要因
鉄欠乏
亜鉛欠乏
栄養不足
心理的要因
ストレス
不安
発達特性
発達・神経学的要因
異食病は次のような人でみられることがあります。
知的発達症
自閉スペクトラム症(ASD)
神経発達症
ただし、これらの人すべてに異食病がみられるわけではありません。
起こりうる合併症
異食病では、食べた物質によって重い合併症が起こることがあります。
腸閉塞
消化管穿孔
中毒(鉛など)
歯の損傷
窒息
感染症
栄養障害
そのため、異食行動がある場合は医療機関での評価が重要です。
治療
1. 原因への対応
まず、身体的な原因がないか調べます。
血液検査
鉄欠乏の評価
亜鉛欠乏の評価
必要に応じて画像検査
鉄や亜鉛の不足が認められた場合は、その治療を行います。
2. 行動療法
特に小児や発達症のある方では、
行動療法
環境調整
保護者への支援
が重要になります。
3. 心理療法
必要に応じて、
認知行動療法(CBT)
ストレス対処法
などが行われます。
4. 薬物療法
異食病そのものに効果が確立された薬はありません。
ただし、
強迫症
不安症
発達症
などを合併している場合には、それらに対する薬物療法が行われることがあります。
強迫症との違い
項目 | 異食病 | 強迫症 |
主な行動 | 食べ物でないものを食べる | 強迫観念や強迫行為 |
食べる目的 | 食べたい衝動・習慣など | 不安を打ち消すためとは限らない |
中心症状 | 異食行動 | 強迫観念・強迫行為 |
神経性やせ症との違い
項目 | 異食病 | 神経性やせ症 |
主な問題 | 食べ物でないものを食べる | 体重増加への強い恐怖 |
体型へのこだわり | 通常はない | ある |
摂食行動 | 非食品を摂取 | 食事制限・過食・代償行動など |
予後
予後は原因や年齢によって異なります。
幼児では自然に改善することもあります。
栄養不足が原因の場合は、その治療で改善することがあります。
発達症などに関連する場合は、長期的な支援が必要になることがあります。
受診の目安
次のような場合は、小児科、精神科、心療内科などへの相談を検討してください。
食べ物ではないものを繰り返し食べる
1か月以上続いている
腹痛や便秘、嘔吐などの症状がある
電池、磁石、金属、ガラスなど危険なものを飲み込んだ疑いがある(この場合は直ちに救急受診が必要です)
よくある誤解
幼児が一時的に物を口に入れる行動とは異なります。 乳幼児では発達の一環として口に物を入れることがありますが、異食病では年齢や発達段階を超えて、非食品を繰り返し食べ続けます。
「意志が弱いから起こる病気」ではありません。 栄養状態、発達、心理的要因など、複数の要因が関係する医学的な疾患であり、適切な評価と治療が重要です。
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