病気不安病とは?
病気不安病(Illness Anxiety Disorder:IAD)とは
病気不安病(Illness Anxiety Disorder:IAD)とは、重い病気にかかっている、または将来かかるのではないかという強い不安が続く精神疾患です。
実際には身体症状がほとんどないか、あっても軽いにもかかわらず、重大な病気への不安が非常に強く、日常生活に支障をきたします。
DSM-5-TRでは「病気不安病」という診断名が用いられています。以前のDSM-IVで「心気症(Hypochondriasis)」と呼ばれていたものの一部が、この診断名に再分類されました。
主な症状
1. 病気への強い不安
「がんではないか」
「心臓病ではないか」
「脳の病気ではないか」
「難病かもしれない」
などと強く心配します。
2. 身体症状はない、または軽い
例えば、
少しの頭痛
軽い疲労
一時的な動悸
など、ごく軽い症状でも重大な病気の兆候だと考えてしまうことがあります。
3. 過度な確認行動
何度も身体を触って確認する
鏡で観察する
血圧や体温を何度も測る
インターネットで病気を繰り返し検索する
4. 医療機関との関わり方
病気不安病では、大きく2つのタイプがあります。
① 医療を求め続けるタイプ
複数の病院を受診する
検査を何度も受ける
「異常なし」と言われても安心できない
② 医療を避けるタイプ
本当に重い病気と診断されるのが怖くて病院へ行けない
検査そのものを避ける
診断
DSM-5-TRでは、おおむね次のような特徴が診断の対象となります。
重い病気への強い不安がある
身体症状はない、または軽い
健康状態を過度に確認したり、逆に医療を避けたりする
不安が6か月以上続く
日常生活に支障がある
他の精神疾患では十分に説明できない
原因
原因は一つではなく、複数の要因が関係すると考えられています。
心理的要因
不安になりやすい性格
完璧主義
健康への強いこだわり
過去の経験
自分や家族が重い病気を経験した
子どもの頃の入院経験
家族が病気に対して非常に敏感だった
社会的要因
インターネットで病気の情報を過剰に検索する
メディアの健康情報への過度な接触
治療
1. 心理療法
最も効果が期待される治療です。
認知行動療法(CBT)
心理教育
不安への対処法
ストレスマネジメント
認知行動療法では、「少しの症状=重大な病気」という考え方を見直し、不安への対処を身につけることを目指します。
2. 薬物療法
病気不安病そのものを治す薬はありませんが、
抗うつ薬(特にSSRIなど)
抗不安薬(必要に応じて短期間)
が、不安や抑うつを和らげる目的で用いられることがあります。
身体症状病との違い
項目 | 病気不安病 | 身体症状病 |
身体症状 | ない、または軽い | 明らかな身体症状がある |
中心となる問題 | 「重大な病気ではないか」という不安 | 身体症状そのものと、それへの過度な反応 |
生活への影響 | 健康への不安が生活を支配する | 身体症状の苦痛が生活に影響する |
全般不安症との違い
項目 | 病気不安病 | 全般不安症 |
不安の対象 | 健康・病気 | 仕事、家族、お金、人間関係など幅広い |
身体症状 | 軽いことが多い | 筋緊張、疲労、不眠などを伴うことが多い |
予後
適切な治療を受けることで、不安の程度が軽くなり、日常生活への影響が減ることが期待できます。一方で、不安が長期間続いている場合は改善まで時間がかかることもあり、継続的な治療が役立つことがあります。
受診の目安
次のような場合は、精神科や心療内科への相談を検討してください。
検査で異常がないと言われても病気への不安が消えない
健康への心配で仕事や学校、家庭生活に支障がある
病気について何時間も調べ続けてしまう
不安や抑うつ、不眠を伴っている
よくある誤解
「気にしすぎ」「気の持ちよう」ではありません。 病気不安病では、病気への不安が本人にとって非常に現実的で強く、生活に大きな影響を及ぼします。
重大な身体疾患の可能性を最初から否定するものではありません。 新たな症状や急激な変化がある場合は、まず身体疾患の評価を受けることが重要です。その上で、身体疾患だけでは説明できない持続的な健康不安がある場合に、病気不安病が検討されます。
コメント