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脱抑制型対人交流病とは?

7月21日
読了時間: 4分

脱抑制型対人交流症(Disinhibited Social Engagement Disorder:DSED)とは

脱抑制型対人交流症(DSED)とは、幼少期に著しい養育不足や不適切な養育環境を経験したことを背景に、見知らぬ大人に対しても過度に親しく接し、年齢相応の警戒心や対人距離感が十分に発達しない精神疾患です。

以前は「脱抑制型対人交流障害」や「脱抑制型対人交流病」と呼ばれることもありましたが、DSM-5-TRやICD-11では**「脱抑制型対人交流症」**という名称が一般的です。

DSM-5-TRでは、**「心的外傷およびストレス因関連症群(Trauma- and Stressor-Related Disorders)」**に分類されています。

主な特徴

通常、幼い子どもは見知らぬ人に対して慎重な態度を示します。しかし、脱抑制型対人交流症では、

  • 初対面の大人にもためらいなく近づく

  • 親や養育者のもとを離れて知らない人について行こうとする

  • 年齢に見合わない親しさで接する

  • 見知らぬ人に抱きついたり手をつないだりする

などの行動がみられます。

これは「人懐っこい性格」とは異なり、危険を避けるための適切な警戒心が十分に育っていない状態です。

原因

脱抑制型対人交流症の背景には、幼少期の著しい養育不足があります。

例として、

  • ネグレクト(育児放棄)

  • 身体的・心理的虐待

  • 養育者が頻繁に交代する環境

  • 長期間にわたる施設養育で、一貫した養育者がいなかった

  • 基本的な情緒的ケアが十分に得られなかった

などが挙げられます。

主な症状

対人行動

  • 見知らぬ人にもためらわず近づく

  • 初対面でも過度に親しげに話しかける

  • 抱っこや身体的接触を求める

  • 養育者がいなくてもあまり気にしない

  • 養育者に確認せず見知らぬ人について行こうとする

社会性

  • 年齢に見合わない対人距離

  • 危険を十分に認識できない

  • 人を過度に信頼しやすい

診断

DSM-5-TRでは、主に以下の点を評価します。

  • 見知らぬ大人に対して過度に親しげに接する行動が持続している。

  • 年齢に見合わない対人距離の近さがある。

  • 養育者への確認や振り返りがほとんどみられない。

  • 幼少期に著しい養育不足があった。

  • 発達年齢が少なくとも9か月以上である。

治療

① 安定した養育環境

最も重要なのは、

  • 安定した養育者

  • 一貫した愛情ある養育

  • 安全な生活環境

を整えることです。

② 家族支援

  • 保護者への心理教育

  • 適切な関わり方の支援

  • 親子関係の形成支援

③ 心理療法

年齢や発達段階に応じて、

  • 遊戯療法

  • 親子相互交流療法

  • トラウマに配慮した心理療法

などが行われることがあります。

④ 薬物療法

脱抑制型対人交流症そのものを治療する薬はありません。

ただし、

  • ADHD

  • 不安症

  • 抑うつ症状

  • 睡眠障害

などを併存している場合には、それぞれに対する治療が行われることがあります。

予後

幼少期に安定した養育環境へ移行し、適切な支援を受けられた場合には、対人関係や社会性の改善が期待できます。一方で、養育環境の問題が長く続いた場合には、対人関係や感情調整の困難が持続することもあります。

反応性アタッチメント症との違い

どちらも幼少期の著しい養育不足と関連しますが、対人行動の特徴が異なります。

疾患

対人行動の特徴

反応性アタッチメント症(RAD)

養育者にも他者にも距離を置き、慰めや安心を求めることが少ない。

脱抑制型対人交流症(DSED)

見知らぬ人にも過度に親しく接し、警戒心が乏しい。

自閉スペクトラム症(ASD)との違い

脱抑制型対人交流症は、自閉スペクトラム症(ASD)と混同されることがありますが、特徴は異なります。

項目

脱抑制型対人交流症

自閉スペクトラム症(ASD)

主な背景

幼少期の著しい養育不足

神経発達症

対人関係

誰にでも過度に親しく接する

社会的コミュニケーションや対人相互作用に持続的な困難がある

警戒心

年齢に比べて乏しい

人によって異なるが、DSEDのような一貫した過度の親しさは典型的ではない

「人懐っこい性格」との違い

人懐っこい子どもでも、通常は見知らぬ大人には一定の警戒心を示し、養育者を安全基地として行動します。

一方、脱抑制型対人交流症では、

  • 初対面の大人にも無差別に近づく

  • 養育者に確認せずについて行こうとする

  • 危険性を十分に認識できない

といった行動が持続し、安全面や社会生活に支障が生じる点が特徴です。これは単なる性格ではなく、適切な評価と支援が必要な精神疾患です。

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