ためこみ病とは?
ためこみ症(Hoarding Disorder)とは
ためこみ症(Hoarding Disorder)とは、実際の価値に関係なく物を捨てることが非常に難しく、多量の物をため込んでしまうことで、生活空間や日常生活に大きな支障が生じる精神疾患です。
以前は強迫症(OCD)の一症状と考えられていましたが、現在のDSM-5-TRやICD-11では、**「強迫症および関連症群(Obsessive-Compulsive and Related Disorders)」**の中の独立した疾患として分類されています。
主な特徴
ためこみ症の人は、
「いつか必要になるかもしれない」
「思い出があるから捨てられない」
「もったいない」
「重要な物を間違って捨ててしまうかもしれない」
と感じ、物を処分することが非常に難しくなります。
その結果、物が増え続け、部屋や家の本来の用途で使えなくなることがあります。
主な症状
① 物を捨てられない
対象となる物はさまざまです。
新聞
雑誌
本
チラシ
段ボール
衣類
食器
容器
家電
レシート
手紙
ペット用品
インターネットで購入した物 など
② 物を集め続ける
必要以上に買う
無料配布の物を大量にもらう
拾ってくる
「いつか使う」と保管する
③ 生活空間が使えない
例えば、
ベッドで寝られない
台所で料理できない
テーブルで食事できない
廊下が通れない
ドアが開かない
など、生活に支障が生じます。
動物ためこみ(Animal Hoarding)
一部の人では、犬や猫などを適切に世話できる数を超えて飼育し続ける「動物ためこみ」がみられることがあります。
これは、ためこみ症と関連してみられることがありますが、診断や対応には個別の評価が必要です。
原因
ためこみ症は、複数の要因が関係して発症すると考えられています。
生物学的要因
遺伝的要因
意思決定や実行機能に関わる脳の神経回路の異常
心理・環境要因
物への強い愛着
完璧主義
「捨てたら後悔する」という考え
大きな喪失体験やストレス
幼少期からの生活習慣
診断
DSM-5-TRでは、主に以下の点を評価します。
実際の価値にかかわらず、物を捨てることが持続的に困難である。
捨てることに強い苦痛を感じる。
物が大量に蓄積し、生活空間の本来の用途が著しく損なわれている。
症状により社会生活や仕事、家庭生活に支障がある。
他の精神疾患や身体疾患だけでは十分に説明できない。
治療
① 認知行動療法(CBT)
ためこみ症に対する代表的な心理療法です。
内容には、
物への考え方を見直す
整理・処分の練習
意思決定能力を高める訓練
再発予防
などが含まれます。
② 薬物療法
薬物療法だけで十分な効果が得られるとは限りませんが、うつ病や強迫症などを併存している場合には、**SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)**などが用いられることがあります。
③ 家族支援
家族が無理に物を捨てると、本人との関係が悪化したり、強い苦痛を招いたりすることがあります。
そのため、
本人の同意を得ながら進める
医療・福祉職と連携する
小さな目標から始める
ことが重要です。
合併しやすい疾患
ためこみ症では、次のような疾患を併存することがあります。
強迫症
うつ病
不安症
注意欠如・多動症(ADHD)
認知症(高齢者では鑑別が重要)
予後
ためこみ症は慢性的な経過をたどることが少なくありません。しかし、認知行動療法を中心とした治療や支援により、物を整理する能力や生活機能の改善が期待できます。重症例では、医療・福祉・家族が連携した長期的な支援が重要です。
他の疾患との違い
疾患 | 主な特徴 |
ためこみ症 | 物を捨てることが極めて困難で、生活空間が物で埋まる |
強迫症 | 強迫観念と強迫行為が中心 |
身体醜形症 | 外見上の欠点への過度なとらわれ |
うつ病 | 意欲低下や抑うつ気分が中心(片付けられないことはあるが、ためこみとは原因が異なる) |
「ためこみ症」と「片付けが苦手」の違い
片付けが苦手な人でも、必要があれば物を処分できることが多いです。一方、ためこみ症では、
物を捨てることに強い苦痛を感じる
実際の価値とは関係なく保存しようとする
生活空間が物であふれる
日常生活や人間関係に大きな支障が出る
という点が特徴であり、治療や支援の対象となる精神疾患と考えられています。
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