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心的外傷後ストレス病とは?

7月21日
読了時間: 4分

心的外傷後ストレス症(Posttraumatic Stress Disorder:PTSD)とは

心的外傷後ストレス症(PTSD)とは、生命の危険や重大な事故、災害、暴力、虐待などの強い心的外傷(トラウマ)を経験した後に、その出来事に関連する症状が長期間続き、日常生活に支障をきたす精神疾患です。

以前は「心的外傷後ストレス障害」と呼ばれていましたが、DSM-5-TRやICD-11では**「心的外傷後ストレス症」**という名称が一般的です。

DSM-5-TRでは、**「心的外傷およびストレス因関連症群(Trauma- and Stressor-Related Disorders)」**に分類されています。

心的外傷(トラウマ)とは

PTSDの原因となる出来事には、以下のようなものがあります。

  • 地震・津波・台風などの自然災害

  • 交通事故

  • 火災

  • 戦争やテロ

  • 身体的暴行

  • 性暴力・性的虐待

  • 児童虐待

  • 家庭内暴力(DV)

  • 重篤な医療体験

  • 他人の重大な事故や死亡を目撃すること

  • 職業上、遺体や悲惨な事故現場に繰り返し接すること(救急隊員、警察官など)

※日常的なストレスや失恋だけでは、通常PTSDの診断基準は満たしません。

主な症状

DSM-5-TRでは、症状は主に4つのグループに分けられます。

① 再体験症状(侵入症状)

トラウマ体験が繰り返しよみがえる症状です。

  • フラッシュバック

  • 悪夢

  • 思い出したくないのに思い出してしまう

  • トラウマを思い出す刺激に強い苦痛を感じる

② 回避症状

トラウマを思い出させるものを避けます。

  • 場所を避ける

  • 人を避ける

  • 会話を避ける

  • 記憶を思い出さないようにする

③ 認知・気分の変化

  • 自分や他人への否定的な考え

  • 強い罪悪感

  • 恐怖や怒り

  • 喜びを感じにくい

  • 他人と距離を感じる

  • トラウマの一部を思い出せないことがある

④ 覚醒度・反応性の変化

  • 常に緊張している

  • 驚きやすい

  • イライラ

  • 怒りっぽい

  • 集中力低下

  • 不眠

  • 危険を過度に警戒する(過覚醒)

原因

PTSDは、強いトラウマ体験をきっかけに発症しますが、すべての人が発症するわけではありません。

発症には、以下のような要因が関係すると考えられています。

生物学的要因

  • 遺伝的要因

  • 扁桃体や海馬など脳の神経回路の変化

  • ストレスホルモン(コルチゾールなど)の調節異常

心理・環境要因

  • トラウマの重症度

  • 繰り返しトラウマを受けたこと

  • 幼少期の逆境体験

  • 周囲からの支援が少ないこと

  • もともとの不安症やうつ病

診断

DSM-5-TRでは、主に以下の条件を満たすかを評価します。

  • トラウマ体験がある。

  • 再体験症状、回避症状、認知・気分の変化、覚醒度の変化がみられる。

  • 症状が1か月以上続いている。

  • 日常生活や仕事、学業などに支障がある。

  • 他の疾患や薬物の影響だけでは十分に説明できない。

治療

① 心理療法

PTSDの治療の中心です。

代表的なものとして、

  • トラウマ焦点化認知行動療法(TF-CBT)

  • 持続エクスポージャー療法(PE)

  • 認知処理療法(CPT)

  • EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)

などがあります。

② 薬物療法

症状に応じて薬物療法が行われることがあります。

主に使用される薬

  • SSRI(セルトラリン、パロキセチンなど)

  • SNRI(症例に応じて)

  • 睡眠障害に対する薬(必要時)

薬は症状を和らげる助けになりますが、心理療法と組み合わせることが重要です。

③ 心理社会的支援

  • 家族支援

  • 学校や職場での配慮

  • 自助グループ

  • 社会福祉サービス

合併しやすい疾患

PTSDでは、以下の疾患を併存することがあります。

  • うつ病

  • 不安症

  • パニック症

  • 物質使用症

  • 解離症

  • 慢性疼痛

予後

適切な治療を受けることで、多くの人に症状の改善が期待できます。一方で、症状が長期間続く人もおり、早期の診断と治療、周囲の支援が重要です。

急性ストレス症との違い

PTSDと似ていますが、発症時期や症状の持続期間が異なります。

疾患

症状の持続期間

急性ストレス症(ASD)

トラウマ後3日以上1か月未満

心的外傷後ストレス症(PTSD)

トラウマ後1か月以上

他の疾患との違い

疾患

主な特徴

心的外傷後ストレス症(PTSD)

トラウマ後の再体験・回避・過覚醒などが続く

急性ストレス症

トラウマ後1か月未満の急性反応

適応症

トラウマ以外の生活上のストレスでも発症しうる

全般不安症

幅広い出来事への慢性的な過度の心配

パニック症

予期しないパニック発作の反復が中心

トラウマを経験すると必ずPTSDになるのか

いいえ。強いトラウマを経験しても、多くの人は時間とともに自然に回復します。一方で、一部の人では症状が長期間続き、PTSDを発症します。

そのため、トラウマ体験後に1か月以上にわたり日常生活に支障をきたす症状が続く場合は、精神科や心療内科などの専門医療機関で相談することが勧められます。

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