公正証書遺言とは?
公正証書遺言とは?仕組みやメリット、作成方法をわかりやすく解説
公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん)とは、遺言をする本人の意思に基づき、公証人が作成する遺言書です。
本人がどのような内容の遺言を残したいのかを公証人に伝え、公証人が本人の真意を確認したうえで、法律で定められた方式に従って遺言公正証書を作成します。
原則として証人2名の立会いが必要です。
自分で全文を書く「自筆証書遺言」と比べると、公証人が作成に関与するため、形式上の不備によって遺言が無効になるリスクを抑えやすい方法として利用されています。
公証人とは?
公証人とは、公正証書の作成などを行う法律の専門家です。
裁判官・検察官などを長年務めた法律実務経験者などから法務大臣によって任命され、公正・中立な立場で業務を行います。
公正証書遺言では、公証人が遺言者本人の意思を確認しながら内容を整理し、法律で定められた形式で遺言書を作成します。
公正証書遺言はどのように作るの?
一般的には、次のような流れで作成します。
1.財産や相続関係を整理する
まず、自分がどのような財産を持っているのかを確認します。
たとえば、
預貯金
不動産
株式・投資信託などの有価証券
自動車
その他の財産
などを整理します。
あわせて、誰にどの財産を相続させたいのか、または誰に財産を遺贈したいのかを考えます。
2.公証役場へ相談する
公証役場に連絡し、公正証書遺言を作成したいことを伝えます。
公証業務に関する相談は無料です。
3.必要な資料を準備する
内容によって異なりますが、一般的には、
本人確認に必要な資料
戸籍関係の資料
不動産の登記事項証明書
固定資産税納税通知書や固定資産評価証明書
預貯金通帳やそのコピー
財産を受け取る人を確認できる資料
遺言執行者に関する資料
などを準備します。
必要書類は遺言の内容によって異なるため、事前に公証役場へ確認するとよいでしょう。
4.公証人と遺言内容を確認する
公証人へ、
「誰にどの財産を残したいのか」
「遺言執行者を誰にするのか」
など、自分の希望を伝えます。
その内容をもとに、公証人が遺言公正証書の内容を整えていきます。
5.証人2名の立会いのもとで作成する
公正証書遺言では、原則として証人2名の立会いが必要です。
遺言者本人の意思であることや、適切な手続きで遺言が作成されたことを確認するためです。
誰でも証人になれるの?
誰でも証人になれるわけではありません。
たとえば、
未成年者
推定相続人
遺贈を受ける人
推定相続人や受遺者の配偶者
推定相続人や受遺者の直系血族
などは証人になることができません。
証人を自分で用意できない場合には、公証役場から紹介してもらえる場合もあります。
公正証書遺言のメリット
形式上の不備が生じにくい
自筆証書遺言の場合、法律で定められた方式を満たしていないと、遺言の全部または一部が無効になることがあります。
公正証書遺言では公証人が作成に関与するため、このような形式上の不備が起こるリスクを大きく減らすことができます。
紛失や改ざんのリスクを抑えられる
公正証書遺言の原本は公証人側で管理・保存されます。
そのため、自宅で保管していた遺言書が紛失したり、誰かに破棄されたりするリスクを抑えることができます。
現在は公正証書のデジタル化も進み、公正証書原本は原則として電磁的記録で作成・保存される仕組みになっています。
家庭裁判所の「検認」が不要
公正証書遺言の大きな特徴の一つが、家庭裁判所による検認手続きが不要であることです。
検認とは、遺言書の状態や内容を家庭裁判所で確認する手続きです。
一般的な自筆証書遺言では検認が必要ですが、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用している場合は検認不要です。
公正証書遺言も検認が不要なため、相続開始後の手続きを比較的スムーズに進めやすくなります。
遺言執行者も指定できる
公正証書遺言では、遺言執行者を指定することもできます。
遺言執行者とは、遺言者が亡くなった後に、その遺言内容を実現するための手続きを行う人です。
たとえば、
預貯金の手続き
財産の引き渡し
不動産の相続に関する手続き
遺贈に関する手続き
などを進めます。
遺言を作る際には、「何を残すか」だけでなく、誰に遺言を実行してもらうかも考えておくとよいでしょう。
公正証書遺言にも費用がかかる
公正証書遺言は無料で作成できるわけではありません。
公証人へ支払う作成手数料が必要です。
金額は、遺言によって財産を受け取る人の人数や、それぞれが受け取る財産の価額などによって変わります。
公証人の手数料は政令によって定められており、2025年10月1日から新しい手数料体系が適用されています。
弁護士や司法書士、税理士などへ別途相談・依頼する場合には、その専門家への報酬が必要になることもあります。
病院や自宅でも作成できる場合がある
病気や身体上の事情などで公証役場へ行くことが難しい場合には、公証人に病院や自宅などへ出張してもらって公正証書遺言を作成できる場合があります。
この場合には、公証人の出張に伴う追加手数料や旅費、日当などが必要になることがあります。
公正証書遺言はオンラインでも作れるの?
2025年10月1日から、公正証書の作成手続きがデジタル化されました。
一定の条件を満たし、公証人が相当と認めた場合には、Web会議を利用した「リモート方式」で公正証書を作成できる場合があります。
ただし、遺言は本人の真意や判断能力を確認することが特に重要な手続きであるため、リモート方式を利用できるかどうかは慎重に判断されます。
「公正証書遺言なら必ずオンラインで作成できる」というわけではありません。
自筆証書遺言との違いは?
代表的な違いを簡単に整理すると、次のようになります。
公正証書遺言
公証人が作成に関与する
証人2名が必要
公証人側で原本が保存される
家庭裁判所の検認が不要
作成手数料がかかる
自筆証書遺言
基本的に本人が作成する
証人は不要
費用を抑えやすい
方式を間違えると無効になる可能性がある
原則として検認が必要
法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用した場合は検認不要
どちらが適しているかは、財産や家族関係、遺言内容などによって異なります。
公正証書遺言を作れば絶対に争いにならない?
公正証書遺言は安全性・確実性の高い遺言方式ですが、作成すれば絶対に相続トラブルが起きないというわけではありません。
たとえば、
遺言作成時の判断能力が争われる
遺留分をめぐって問題になる
財産状況が作成後に大きく変わる
相続人同士の感情的な対立が起こる
といったケースも考えられます。
そのため、複雑な相続関係がある場合や、相続人間で争いが予想される場合には、弁護士などの専門家にも相談することが重要です。
公正証書遺言は「自分の意思を確実に残す」ための選択肢
公正証書遺言は、
「自分が亡くなった後、財産を誰にどのように引き継いでほしいのか」
という意思を、法律で定められた正式な形で残すための方法です。
公証人が作成に関与し、家庭裁判所の検認も必要ないため、遺言を確実に残したい場合には有力な選択肢の一つとなります。
特に、
不動産など財産が複数ある
相続人以外の人にも財産を残したい
相続手続きをできるだけ円滑にしたい
遺言書の紛失や形式不備を避けたい
遺言執行者を決めておきたい
といった場合には、公正証書遺言を検討する価値があります。
大切なのは、単に遺言書を作ることだけではなく、自分の希望と家族の状況を整理し、将来どのように財産を引き継ぐのかを生前から考えておくことです。
※本記事は2026年8月時点の一般的な制度について解説したもので、個別の法律・税務上の助言ではありません。遺言内容や相続関係によって必要な対応は異なります。実際に公正証書遺言を作成する場合は、公証役場、弁護士、司法書士、税理士などの専門家へご確認ください。
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