遺言執行者とは?
更新日:9月13日
遺言執行者とは?役割やできること、選び方をわかりやすく解説
遺言執行者(いごんしっこうしゃ)とは、亡くなった方が残した遺言の内容を実現するために、必要な手続きを行う人や法人のことです。
簡単にいうと、
「遺言書に書かれている内容を、実際の相続手続きとして実行する役割を担う人」
です。
遺言書に「この不動産を長男に相続させる」「この財産を○○さんに遺贈する」などと書かれていても、実際には不動産の登記、預貯金の手続き、財産の引き渡しなどが必要になることがあります。
遺言執行者は、こうした手続きを行い、遺言者の最後の意思を実現していきます。
裁判所も、遺言執行者を「遺言の内容を実現する者」と説明しています。
遺言執行者は何をするの?
遺言の内容によって異なりますが、遺言執行者は一般的に、
遺言書の内容を確認する
相続人を調査する
相続財産を確認する
相続人へ遺言内容を通知する
財産目録を作成する
預貯金について必要な手続きを行う
不動産について必要な手続きを行う
有価証券などの名義変更を進める
遺贈された財産を受遺者へ引き渡す
遺言に基づく各種手続きを行う
遺言執行が終了したことを関係者へ報告する
といった役割を担います。
民法では、遺言執行者には、遺言の内容を実現するために、相続財産の管理その他、遺言執行に必要な行為を行う権利・義務があるとされています。
遺言執行者は相続人とは違うの?
遺言執行者と相続人は別のものです。
相続人
相続人とは、亡くなった人の財産や権利・義務を相続する立場にある人です。
たとえば、
配偶者
子
父母
兄弟姉妹
などが、一定の順位に従って法定相続人になる場合があります。
遺言執行者
一方、遺言執行者は、
「遺言内容を実現するための手続きを担当する人」
です。
つまり、
相続人=財産を相続する立場の人
遺言執行者=遺言を実行する役割の人
と考えると分かりやすいでしょう。
相続人が遺言執行者になることもできる?
一定の条件を満たしていれば、相続人を遺言執行者として指定することもできます。
たとえば、
「長男を遺言執行者に指定する」
と遺言書に記載することも考えられます。
ただし、相続人同士の関係が複雑な場合や、財産が多い場合、遺言内容について争いが予想される場合には、第三者や専門家を遺言執行者にすることも検討されます。
誰が遺言執行者になれるの?
遺言執行者には、
親族
相続人
友人・知人
弁護士
司法書士
信託銀行などの法人
などが指定されることがあります。
ただし、法律上、誰でもなれるわけではありません。
民法では、未成年者および破産者は遺言執行者になることができないと定められています。
実際に誰を指定するかについては、遺言内容の複雑さや財産の種類などを考えて決めることが大切です。
遺言執行者はどうやって決めるの?
代表的な方法は、遺言書の中で遺言執行者を指定しておくことです。
たとえば、
「本遺言の遺言執行者として○○○○を指定する」
といった形で記載します。
遺言者本人が、生前に「自分が亡くなった後、この人に遺言を実行してもらいたい」と決めておくわけです。
遺言執行者の指定を第三者へ委託する方法もあります。
遺言執行者が指定されていなかったら?
遺言書に遺言執行者が指定されていない場合でも、必要に応じて家庭裁判所に選任を申し立てることができます。
また、
指定されていた遺言執行者が亡くなった
遺言執行者が就任しなかった
遺言執行者がいなくなった
といった場合にも、家庭裁判所へ選任を申し立てることができます。
相続人、遺言者の債権者、遺贈を受けた人などの利害関係人が、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所へ申し立てます。
遺言執行者に指定されたら必ず引き受けなければならない?
遺言書に名前を書かれたからといって、当然にその人が強制的に遺言執行をしなければならないというわけではありません。
指定された人が就任を承諾し、遺言執行者として任務を開始することになります。
そのため、遺言書で遺言執行者を指定する場合には、可能であれば生前に本人へ相談し、
「自分が亡くなったときに遺言執行者をお願いしたい」
と伝えておくと安心です。
遺言執行者は相続人へ通知する
遺言執行者が任務を開始した場合には、遺言の内容を相続人へ知らせる必要があります。
現在の民法では、遺言執行者が任務を開始したときは、遅滞なく遺言内容を相続人へ通知する仕組みが定められています。
遺言執行者が自分だけで秘密に手続きを進めてよいというわけではありません。
遺言執行者には強い権限がある
遺言執行者には、遺言を実現するために必要な権限が与えられています。
たとえば、特定の財産を特定の相続人へ承継させる遺言の場合には、その内容に応じて対抗要件を備えるための手続きを行う権限があります。
預貯金についても、一定の場合には払戻しの請求などを行う権限があります。
そのため、遺言執行者は単なる「相続手続きのお手伝い役」ではなく、遺言者の意思を実現するために法律上の権限を持つ重要な立場です。
相続人は遺言執行を邪魔してはいけない
遺言執行者がいる場合、相続人が勝手に相続財産を処分するなど、遺言執行を妨げる行為をすると問題になることがあります。
遺言執行者制度は、相続人同士の意見が一致しない場合などでも、遺言者の意思を適正に実現できるようにする役割を持っています。
法務省の資料でも、相続人間の意見の不一致や非協力などがある場合でも、遺言を適正かつ迅速に実現するための制度として遺言執行者が位置づけられています。
遺言執行者と受遺者の違い
「受遺者(じゅいしゃ)」という言葉も相続ではよく登場します。
受遺者とは、
遺言によって財産を受け取る人
です。
一方、遺言執行者は、
遺言による財産の承継などを実際に実行する人
です。
たとえば、
「友人Aさんに500万円を遺贈し、弁護士Bさんを遺言執行者に指定する」
という遺言の場合、
Aさん=受遺者
Bさん=遺言執行者
となります。
遺言執行者と相続開始通知者の違い
遺言信託などでは「相続開始通知者」という人が指定されることがあります。
こちらも遺言執行者とは別の役割です。
相続開始通知者
遺言者が亡くなったことを、信託銀行などへ知らせる人。
遺言執行者
その連絡などを受けた後、遺言の内容を実際に実現していく人または法人。
つまり、
相続開始通知者=死亡を知らせる役割
遺言執行者=遺言を実行する役割
という違いがあります。
遺言信託では信託銀行が遺言執行者になることもある
信託銀行などが提供する「遺言信託」では、生前に遺言書を作成し、
将来、本人が亡くなったときには信託銀行が遺言執行者となる
というサービスがあります。
このような仕組みを利用すると、
生前に遺言内容を相談する
公正証書遺言などを作成する
信託銀行などを遺言執行者として指定する
遺言書を保管してもらう
本人が亡くなる
相続開始の連絡が行われる
信託銀行が遺言執行を開始する
といった流れになります。
財産が多い場合や、相続手続きを家族だけで行うことが難しい場合には、このようなサービスも選択肢の一つになります。
遺言執行者には報酬が発生することもある
遺言執行者へ報酬を支払う場合があります。
弁護士・司法書士・信託銀行などの専門家や法人へ依頼する場合には、それぞれの報酬体系やサービス料金が設定されていることがあります。
遺言書で報酬について定めておく方法もあります。
そのため、専門家へ依頼する場合には、
基本料金
遺産総額に応じた報酬
不動産手続きに関する費用
税理士など他の専門家へ依頼する費用
なども事前に確認しておくと安心です。
遺言執行者を選ぶときのポイント
遺言執行者には、財産を扱う重要な役割があります。
そのため、
信頼できるか
相続人と適切に連絡できるか
財産管理ができるか
長期間の手続きにも対応できるか
法律や相続手続きについて理解があるか
相続人との利益相反が大きくないか
本人より先に亡くなる可能性なども考慮しているか
といった点を考えて選ぶことが大切です。
特に、
相続人が多い
不動産が複数ある
相続人以外への遺贈がある
家族関係が複雑
相続人間のトラブルが予想される
会社や事業用財産が含まれている
といった場合には、弁護士・司法書士・信託銀行などの専門家へ相談することも検討するとよいでしょう。
遺言執行者がいれば相続争いを完全に防げる?
遺言執行者を指定することで、相続手続きを円滑に進めやすくなります。
しかし、
遺言執行者を指定すれば、必ず相続トラブルを防げるわけではありません。
たとえば、
遺言書そのものの有効性
遺留分
遺言作成時の判断能力
財産の範囲
遺言内容の解釈
などをめぐって争いになる可能性があります。
遺言執行者は遺言を実行する役割であり、相続人同士のすべての紛争を解決する役割ではありません。
紛争が発生している場合には、弁護士への相談が必要になることがあります。
遺言執行者は「遺言者の最後の意思を実現する人」
遺言執行者を簡単にまとめると、
「亡くなった人が遺言書に残した意思を、実際の相続手続きとして実現する人」
です。
遺言書を作ることは大切ですが、それと同時に、
「自分が亡くなった後、この遺言を誰が実行するのか」
まで考えておくことで、より円滑な財産承継につながります。
特に複雑な財産や遺贈がある場合には、遺言書の作成段階から遺言執行者について検討しておくことが重要です。
※本記事は2026年8月時点の日本の制度について一般的に解説したものであり、個別の法律・税務上の助言ではありません。遺言執行者の権限や必要な手続きは遺言内容によって異なります。具体的な遺言・相続については、弁護士、司法書士、公証役場、家庭裁判所、信託銀行などへご確認ください。
【この記事について】
公開日:2026年8月25日|最終更新日:2026年9月13日
執筆・運営:沖縄カオスユニオン(代表:西潟 春輝)
参考情報:裁判所・法務省などの公的情報をご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の法律判断・手続判断は行いません。個別の事情がある場合は、弁護士・司法書士等の専門家や公的な相談窓口にご相談ください。
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