自筆遺言とは?
自筆遺言とは?自筆証書遺言の書き方や注意点をわかりやすく解説
「自筆遺言」と一般的に呼ばれているものは、法律上は**「自筆証書遺言(じひつしょうしょゆいごん)」**といいます。
自筆証書遺言とは、遺言をする本人が、自分で遺言書を書いて作成する遺言方式です。
公証人に作成してもらう「公正証書遺言」と違い、基本的には自分一人で作成できるため、比較的手軽に利用できる遺言方法です。法務局も、自筆証書遺言について、本人が全文・日付・氏名を自書できれば一人で作成できる方式として案内しています。
自筆証書遺言には何を書くの?
遺言には、たとえば次のような内容を記載することができます。
誰にどの財産を相続させるのか
相続人以外の人へ財産を遺贈すること
不動産を誰に引き継ぐのか
預貯金や有価証券を誰に残すのか
遺言執行者を誰にするのか
子どもの認知
相続人の廃除やその取消し
祭祀を主宰する人についての指定
ただし、遺言書に書けばどのような希望でも法律上の強制力が生じるわけではありません。
遺言によって法律上の効果が認められる事項は決まっているため、複雑な内容を希望する場合には専門家へ相談すると安心です。
自筆証書遺言の基本的な書き方
自筆証書遺言では、原則として遺言者本人が、
遺言書の全文・日付・氏名を自分で書く
必要があります。
そして、遺言書には押印をします。
たとえば、
「令和8年8月25日」
のように、作成した年月日が特定できる形で記載します。
「令和8年8月吉日」のように、具体的な日付を特定できない書き方は避ける必要があります。
パソコンで作ってはいけないの?
遺言本文については、原則として本人が自筆する必要があります。
ただし、財産目録については自筆でなくても構いません。
たとえば、
パソコンで作成した財産一覧
預金通帳のコピー
不動産の登記事項証明書
などを財産目録として添付することができます。
ただし、自筆ではない財産目録を添付する場合には、法律で定められた方式に従って署名・押印などをする必要があります。
つまり、
遺言本文は自筆、財産目録はパソコン作成も可能
と覚えておくと分かりやすいでしょう。
自筆証書遺言のメリット
自分一人で作成できる
公正証書遺言のように、公証人や証人を用意しなくても作成できます。
そのため、「まず遺言を残しておきたい」という場合にも利用しやすい方式です。
費用を抑えやすい
自分で作成して自宅で保管する場合、基本的には公証人へ支払う作成手数料などは必要ありません。
内容を知られずに作成できる
自分だけで作成できるため、生前に遺言内容を家族などへ知られずに作成することもできます。
書き直しやすい
財産状況や家族関係が変わった場合、新しい遺言を作成することもできます。
ただし、複数の遺言書が存在すると内容の判断が複雑になる可能性があるため、変更するときは慎重に行う必要があります。
自筆証書遺言の注意点
手軽に作成できる反面、自筆証書遺言には注意点もあります。
書き方を間違えると無効になる可能性がある
遺言は法律で方式が厳格に定められています。
必要な署名や日付がなかったり、訂正方法を間違えたりすると、遺言の全部または一部が無効になる可能性があります。
紛失する可能性がある
自宅などで保管している場合、
遺言書をなくしてしまう
家族が遺言書を見つけられない
誤って処分される
改ざんされる
といったリスクがあります。
こうした問題を減らすために、現在は**法務局の「自筆証書遺言書保管制度」**があります。
自筆証書遺言書保管制度とは?
自分で作成した自筆証書遺言を、法務局の「遺言書保管所」で保管してもらえる制度です。
法務局では、遺言書の原本と画像データが適切に保管されるため、紛失や改ざんの防止につながります。
また、保管申請の際には、法務局職員が自筆証書遺言の方式について外形的な確認を行います。
ただし、法務局が遺言内容そのものが法律的に適切かどうかまで相談・審査してくれる制度ではありません。
法務局に預けると「検認」が不要になる
通常、自宅などで保管されていた自筆証書遺言については、遺言者が亡くなった後、原則として家庭裁判所で「検認」の手続きを行う必要があります。
しかし、自筆証書遺言書保管制度を利用して法務局で保管されている遺言書については、家庭裁判所の検認が不要です。
これは法務局保管制度の大きなメリットの一つです。
「検認」とは?
検認とは、相続人に遺言書の存在や内容を知らせるとともに、遺言書の状態や日付、署名、訂正状況などを確認する家庭裁判所の手続きです。
なお、
検認=遺言書が有効か無効かを最終的に判断する手続き
という意味ではありません。
遺言の有効性をめぐって争いが生じた場合には、別途裁判などで問題になる可能性があります。
自筆証書遺言と公正証書遺言の違い
代表的な違いを簡単に比較すると、次のようになります。
自筆証書遺言
本人が自分で作成する
証人は原則不要
費用を抑えやすい
内容を秘密にしやすい
形式を間違えると無効になる可能性がある
自宅保管の場合は紛失・改ざんなどのリスクがある
自宅保管の場合、原則として家庭裁判所の検認が必要
法務局保管制度を利用すれば検認不要
公正証書遺言
公証人が作成に関与する
原則として証人2名が必要
作成手数料が必要
形式上の不備が起こりにくい
原本が公証人側で保管される
家庭裁判所の検認が不要
法務局も、自筆証書遺言と公正証書遺言について、このような特徴の違いを案内しています。
自筆証書遺言を作れば相続トラブルを防げる?
遺言を作成することは、相続トラブルを予防するための有効な方法の一つです。
ただし、遺言書を作れば必ず争いがなくなるわけではありません。
たとえば、
遺留分をめぐる問題
遺言作成時の判断能力をめぐる問題
遺言内容の解釈をめぐる問題
財産の記載漏れ
複数の遺言書が発見される
などによって争いが発生することがあります。
特に財産が多い場合や、家族関係が複雑な場合には、弁護士・司法書士・税理士などの専門家へ相談することも検討するとよいでしょう。
自筆証書遺言は手軽に始められる相続対策の一つ
自筆証書遺言は、
「自分の財産を、亡くなった後に誰へどのように引き継いでほしいのか」
という意思を自分自身で書き残す方法です。
費用を抑えながら一人で作成できるというメリットがある一方、書き方を間違えると遺言が無効になる可能性や、紛失・改ざんなどのリスクがあります。
現在は法務局の自筆証書遺言書保管制度も利用できるため、
「自分で遺言を書きたいけれど、自宅で保管するのは心配」
という場合には、有力な選択肢となります。
遺言を作る際には、形式だけでなく、家族関係や財産状況、相続税、遺留分なども含めて考え、自分と家族に合った方法を選ぶことが大切です。
※本記事は2026年8月時点の一般的な制度について解説したもので、個別の法律・税務上の助言を行うものではありません。遺言の作成や相続について具体的な判断が必要な場合は、法務局、公証役場、弁護士、司法書士、税理士などの専門家へご確認ください。
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