解離性健忘とは?
解離性健忘とは
解離性健忘(Dissociative Amnesia)とは、通常の物忘れでは説明できないほど、自分自身に関する重要な記憶を思い出せなくなる解離症です。忘れる内容は、強いストレスや心的外傷に関連する出来事であることが多く、一般的な知識や新しいことを覚える能力は比較的保たれます。ICD-11では「解離性健忘」に分類されています。
「解離性健忘病」という表現でも意味は通じますが、一般的な診断名は解離性健忘または解離性健忘症です。
主な症状
事故や暴力、虐待など、特定の出来事を思い出せない
数時間・数日など、一定期間の記憶が抜け落ちる
出来事の一部分だけ思い出せない
まれに、自分の名前・経歴・家族など、人生全体に関する記憶が失われる
記憶がないことに本人が気づかない場合もある
失われるのは主に自伝的記憶であり、言葉の意味、仕事の技能、日常動作などがすべて失われるわけではありません。
主な型
限局性健忘特定の出来事や一定期間を思い出せない、最も一般的な型です。
選択性健忘出来事の一部だけを思い出せません。
全般性健忘自分の人生歴や自己同一性を広く失いますが、非常にまれです。
このほか、突然自宅や職場を離れて移動し、その間の記憶や自分の身元を失うことがあります。これは解離性とん走と呼ばれ、解離性健忘に伴うことがあります。
原因・きっかけ
発症には、災害、事故、暴力、戦争、虐待、強い対人葛藤などの圧倒的なストレスや心的外傷が関係することがあります。ただし、本人が意図的に忘れているわけではなく、原因や仕組みを単純に一つに決めることはできません。
診断
精神科では、症状や出来事の経過を詳しく確認するとともに、次のような他の原因を除外します。
頭部外傷や脳卒中
てんかん
認知症
せん妄
アルコールや薬物の影響
睡眠不足などによる一時的な記憶障害
PTSDや解離性同一症など、ほかの精神疾患
解離性健忘は、脳の病気や物質の影響では説明できないことを確認した上で診断されます。
治療
治療では、まず安心できる環境を整え、安全を確保します。その後、支持的な精神療法やトラウマに配慮した心理療法を通じて、ストレスへの対処を支援します。無理に記憶を取り戻そうとすると苦痛が強まることがあるため、治療は慎重に進めます。
解離性健忘そのものを直接治す薬はありませんが、不眠、抑うつ、不安、PTSDなどを伴う場合には、それらに対する薬が補助的に使われることがあります。
すぐに受診すべき場合
突然の健忘は、脳卒中、頭部外傷、てんかん、薬物中毒などでも起こります。急に記憶がなくなった、意識がもうろうとしている、激しい頭痛・麻痺・けいれんがある、頭を打った後に発症した場合は、解離性と決めつけず、救急医療機関を受診してください。
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