遺言執行引受予諾とは?
遺言執行引受予諾とは?仕組みや遺言信託との違いをわかりやすく解説
遺言執行引受予諾(いごんしっこうひきうけよだく)とは、本人が生きているうちに、信託銀行などに対して、将来自分が亡くなった際に遺言執行者となり、遺言の内容を実現するための手続きを行ってもらうことをあらかじめ取り決めておく仕組みです。
少し難しい言葉ですが、「予諾」とは、簡単にいえば将来の引き受けについて、あらかじめ約束しておくことと考えると分かりやすいでしょう。
信託銀行などでは、遺言書作成の相談から遺言書の保管、相続開始後の遺言執行までを一体的に提供するサービスとして扱われています。
遺言執行者とは?
遺言執行者とは、遺言書に書かれた内容を実際に実現するための手続きを行う人や法人です。
たとえば、遺言書に「この預金は長男へ」「この不動産は長女へ」と書かれていても、亡くなっただけで自動的にすべての名義が変更されるわけではありません。
相続財産の確認や名義変更、財産の引き渡しなど、さまざまな手続きが必要になります。
そこで遺言執行者が、遺言の内容に基づいて必要な手続きを進めます。
遺言執行引受予諾の流れ
一般的には、次のような流れで利用します。
1.遺言内容について相談する
まず、自分の財産や家族関係、誰にどの財産を残したいのかなどを整理します。
2.遺言書を作成する
信託銀行などのサポートを受けながら遺言内容を決め、公正証書遺言を作成する方式が一般的です。
3.遺言執行引受予諾契約を結ぶ
本人と信託銀行などの間で、将来の遺言執行について契約を締結します。
遺言書の中でも、その信託銀行などを遺言執行者として指定します。
4.遺言書を保管してもらう
作成した遺言書の正本などを信託銀行が保管します。
保管期間中には、財産や家族構成、遺言内容などに変更がないか定期的に確認するサービスもあります。
5.本人が亡くなったことを金融機関へ知らせる
遺言者が亡くなったときには、あらかじめ指定された「相続開始通知者」などが信託銀行へ連絡します。
6.遺言執行が始まる
信託銀行などが遺言執行者に就任し、遺言の内容に基づいて手続きを開始します。
具体的には、
相続人や受遺者の確認
相続財産の調査
財産目録の作成
預貯金などの解約・名義変更
有価証券などの手続き
不動産の名義変更に必要な手続き
財産の引き渡し
遺言執行完了後の報告
などが行われます。
「予諾」だから生前に遺産を渡すわけではない
ここは重要なポイントです。
遺言執行引受予諾契約を結んだからといって、その時点で財産の所有権を信託銀行へ渡すわけではありません。
本人が生きている間は、基本的に本人が自分の財産を管理します。
将来、本人が亡くなって相続が開始したときに、遺言執行者として手続きを行ってもらうための準備をしておく仕組みです。
遺言信託との関係は?
金融機関が「遺言信託」という名称で提供しているサービスの中に、遺言執行引受予諾業務が含まれていることがあります。
たとえば中国銀行では、「遺言信託(遺言執行引受予諾業務)」という名称でサービスを提供しています。
つまり、
遺言信託=サービス全体の名称
遺言執行引受予諾=将来、遺言執行を引き受けてもらうための契約・業務
と考えると分かりやすいでしょう。
なお、「遺言信託」という言葉は、信託法上の「遺言による信託」とは異なる意味で金融機関のサービス名称として使われる場合があります。
遺言書管理信託との違い
「遺言書管理信託」というサービスもあります。
こちらは主に作成した遺言書を安全に保管してもらうためのサービスです。
遺言執行引受予諾業務では、保管だけでなく、相続開始後に遺言執行者として実際の相続手続きまで行うことが大きな違いです。
遺産整理業務との違い
遺産整理業務は、亡くなった後に相続人などから依頼を受け、相続手続きを支援するサービスです。
一方、遺言執行引受予諾は、本人が生前に契約し、自分が亡くなった後の遺言執行をあらかじめ準備しておく点が特徴です。
遺言執行引受予諾のメリット
自分の意思を実現しやすくなる
誰にどの財産を残したいのかを遺言書に記載し、さらに執行する人まで生前に準備しておくことができます。
家族の相続手続きの負担を減らせる
相続では、財産調査や金融機関への届出、名義変更など多くの手続きが発生します。
専門機関へ遺言執行を依頼しておくことで、家族の事務的な負担を軽減できる可能性があります。
長期間にわたって遺言書を管理してもらえる
本人が元気なうちに契約し、その後の財産状況などを確認しながら遺言を管理してもらえるサービスもあります。
注意したいポイント
費用がかかる
遺言執行引受予諾では、契約時の手数料や遺言書の保管料、遺言執行時の報酬などが発生する場合があります。
金融機関によって料金体系は大きく異なるため、契約前の確認が重要です。
契約すれば必ず執行されるとは限らない場合がある
金融機関によっては、相続開始時に遺言の執行が著しく困難になっている場合など、遺言執行者への就任を辞退することがある旨を定めています。
そのため、「予諾」という名称だけで絶対的な保証だと考えず、契約条件を確認しておくことが大切です。
法律・税務の専門家が別途必要になることもある
遺産をめぐって相続人同士の紛争が発生した場合や、相続税の申告、登記など、内容によっては弁護士・税理士・司法書士などへの依頼が別途必要になる場合があります。
遺言執行引受予諾は「自分の死後の手続きを生前に準備する」仕組み
遺言執行引受予諾は、簡単にまとめると、
「自分が亡くなったら、この遺言書の内容を実現するための手続きをお願いします」と、生前のうちに信託銀行などと取り決めておく仕組み
です。
遺言書を作るだけでなく、その内容を「誰が実現するのか」まで準備しておけるところに大きな特徴があります。
相続財産が多い場合、不動産や有価証券など複数種類の財産がある場合、残された家族の相続手続きの負担を減らしたい場合などには、検討できる選択肢の一つです。
※本記事は遺言執行引受予諾についての一般的な情報を紹介するものです。サービス内容・契約条件・手数料・遺言執行者への就任条件などは金融機関によって異なります。個別の遺言・相続については、信託銀行、弁護士、司法書士、税理士などの専門家へご確認ください。
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